糖質の摂り過ぎによるリスクが知られるようになり、糖質制限や血糖値を急上昇させない食生活に取り組まれている方は少なくありません。ただし「なんとなく糖質は悪そう」というイメージだけで 過度に糖質を制限すると、却って健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
なぜなら、糖質は体内のエネルギー源となる重要な栄養素だから。正しい知識を持って糖質と上手につき合っていく必要があるのです。
今回は、糖質コントロールが必要な理由と、糖質を摂り過ぎるリスクについて解説。また、 血糖値を上げない食品の選び方・食べ方をご紹介します。糖質制限が気になっている、という方はぜひ最後までご覧ください。
糖質とは
糖質とは、三大栄養素である炭水化物の一部です。炭水化物は、体内で消化吸収されてエネルギー源になる糖質と、消化吸収されない食物繊維で構成されています。
糖質にはいくつかの分類方法がありますが、大きく分けると「糖類」「多糖類」の2つ。糖類には、ブドウ糖・果糖・ショ糖などが含まれ、多糖類には、でんぷん・グリコーゲンなどが含まれます。
糖質が不足すると、疲労感や集中力の低下、不安やうつ症状に繋がる恐れがあります。また、糖質不足を補うために、タンパク質がエネルギー源として使われるため、筋肉量が減少して基礎代謝が低下する可能性も。過剰な糖質制限は避け、適切な量の糖質を摂る必要があるのです。
糖質コントロールが必要な理由
糖質は人間のエネルギー源になる重要な栄養素にもかかわらず、なぜ糖質制限や糖質コントロールが必要なのでしょうか。その理由は、現代人の生活が「活動量不足」「糖質過多」になりやすいからです。
現代人は活動量不足
移動は電車や車、階段ではなくエレベーターやエスカレーターを使い、一日中デスクワーク。さらに最近では、在宅ワークや買い物も通販で済ませるなど、現代人の活動量はますます減る一方です。
糖質は活動時のエネルギーとして使われます。活動量が減ったにもかかわらず、食生活はそのままで糖質の摂取量が変わらなければ、消費されず余った糖質が中性脂肪に変化して、肥満や病気の原因となるのです。
糖質過多になりやすい食生活
活動量が不足しているにもかかわらず、三食、白米やパン・麺といった炭水化物をしっかり摂ると、糖質オーバーになってしまう可能性があります。
加えて、現代人は炭水化物以外からも糖質を摂り過ぎる傾向にあります。特に注意が必要なのは清涼飲料水。炭酸飲料やスポーツドリンク、野菜ジュースや美容ドリンクには大量の糖質が含まれています。普段から清涼飲料水を飲む習慣がある方は注意が必要です。
また、現代は、豊富な種類のスイーツやお菓子がコンビニで簡単に買えてしまいます。特に飴やグミなどは、1粒が小さいため罪悪感なく食べがちですが、基本的には砂糖のかたまり。口寂しいからといって日常的に食べていると、積もり積もって糖質オーバーになってしまうのです。
糖質を摂り過ぎるリスクやデメリット
食事から摂取した糖分は、体の中でブドウ糖に変化し、血液中に入ってエネルギーになります。その血液中のブドウ糖の濃度が血糖値です。食事で血糖値が上がると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンは、ブドウ糖が肝臓や筋肉、脂肪細胞に取り込まれるよう作用し、それにより血糖値は食事前の状態に戻ります。これが通常のメカニズムです。
脂肪がついて太る
糖質を多く摂取すると、エネルギーとして消費し切れず余ったブドウ糖が、中性脂肪となって体に蓄積されます。さらに、インスリンには、脂肪の合成を高めたり、脂肪の分解を抑えたりする作用も。糖質を多く摂ることでインスリンも大量に分泌され、脂肪の合成が促進されて太る原因になるのです。
老化の原因になる
血液中の余分な糖分は、体内のタンパク質・脂質と結びついて老化促進物質のAGE(糖化最終生成物)を作ります。体内にAGEが増えることで、肌のハリが失われ、シミやくすみの原因になったり、髪のハリやツヤがなったりといった老化現象を進めてしまうのです。
さまざまな病気の原因になる
糖に関わる代表的な病気が糖尿病です。糖尿病には、自己免疫疾患などが原因の1型と、生活習慣や体質などが原因の2型があります。糖尿病は「現代の国民病」とも呼ばれ、患者数は増加の一途を辿っています。
運動不足や過食が積み重なり、インスリンが働かなくなり血糖値が下がらない状態が糖尿病です。初期にはほとんど自覚症状はありませんが、進行すると、人工透析が必要になったり、失明や壊疽といった重篤な合併症を引き起こしたりします。
また近年では、糖質の過剰摂取がうつ病や認知症の原因になることも知られています。
血糖値を上げない食品の選び方・食べ方のコツ
健康のためには、さまざまな食品をバランスよく摂ることが基本。ただし、糖質をコントロールするうえで、なるべく避けた方が良い食品があります。ここからは、正しく糖質とつき合うための、食品の選び方・食べ方のコツを紹介します。
① 「GL値」を目安に選ぶ
まず、意識したいのが食品の「GL値」です。GL値とは、グリセミック・ロードの略で、食品が血糖値を上昇させる速さを数値化したものです。
従来使われていた「GI値」に、「普段食べる1食量」を加味した数値がGL値。より現実的な指標として、海外ではGL値が主流になっています。食品を選ぶ際は、血糖値を急激に上げる高GL食品を避けましょう。
GL値20以上が高GL、11〜19が中GL、10以下が低GLとされています。ただし、低GL食品も食べ過ぎると高GLになりますので要注意。各食品のGL値は次の表を参考にしてください。
表の食品以外にも、加糖された清涼飲料水も避けた方が良いでしょう。飲み物の糖質は消化吸収が早く、血糖値を急激に上昇させてしまいます。
② 血糖値の急上昇を防ぐ食品を摂る
食物繊維・ビタミン・ミネラルなどの栄養素を一緒に摂ることで、糖質の吸収が穏やかになり血糖値の急上昇を防ぐことが知られています。血糖値を下げる効果が期待できる食品は次の通りです。
・野菜類(たまねぎ・オクラなど)
・きのこ類
・海藻類
・納豆
・ヨーグルト
・ハイカカオチョコレート(カカオ70%以上)
・コーヒー
・牛乳
・緑茶
③ 「βグルカン」を摂る
βグルカンは食物繊維の1種で、オーツ麦・大麦・きのこ類に多く含まれています。βグルカンは、胃の中の食べ物を包み込んで消化器官をゆっくり移動するため、 糖質の吸収を緩やかにして血糖値の上昇を抑える効果があります。
また、コレステロールを吸着して体外へ排出することで、コレステロール値の上昇を抑える効果も。さらに、排便を促進し腸内環境を整えるなど、 ダイエットや健康に高い効果が期待できるのです。
グラノーラの主原材料であるオーツ麦には、βグルカンが豊富に含まれています。手軽で効果的な糖質コントロールとして、 朝食をご飯やパンからグラノーラに置き換える方法がおすすめです。
④ 血糖値を急上昇させない食べ方
ミートファースト
食べる順番を意識することでも、血糖値の急上昇を防ぐことができます。野菜から先に食べる「ベジファースト」はよく聞かれますが、近年注目を集めているのが、タンパク源を最初に食べる「ミートファースト」。
ミート=肉に含まれるタンパク質や脂質を始めに摂ることで、血糖値の急上昇を防ぐだけでなく、より早く満腹感を得られ、ダイエット効果が高いとされています。 肉→野菜→ご飯の順に食べるミートファーストを取り入れましょう。
ゆっくり食べる
早食いは、短時間で血糖値を急上昇させる原因に。食事には少なくとも 15分以上の時間をかけ、ゆっくり食べて血糖値の上昇を緩やかにしましょう。
ゆっくり食べることを意識すると、自然と咀嚼回数が増えます。咀嚼回数が増えると満腹中枢が刺激され、食べ過ぎの抑制効果も期待できるのです。
糖質や血糖値を上手にコントロールして、健康で美しい身体づくりを
今回は、糖質を摂り過ぎるリスクや、血糖値を上げない食品の選び方・食べ方について解説しました。血糖値を急上昇させないためには、低GL値の食品や、血糖値の急上昇を防ぐ食品を摂ることがおすすめ。
さらに、「ミートファースト」「ゆっくり食べる」といった食べ方も意識すると良いでしょう。糖質や血糖値を上手にコントロールして、健康で美しい身体づくりを目指してくださいね。